最近、コニャックメゾン訪問をいくつかしています。
それで、メゾンの話を書こうと思ったら蒸留について書いていないことに気づいてしまった。
気づきたくなかった。笑
ということでコニャックの蒸留についてお届けします。
頑張って描いたから絵だけでも見てほしい!
目次
仕様書訳
まずは仕様書の訳をお届けします。
これを訳してた過去の私を褒めたたえたい。笑
他の項目ももちろんあるので、栽培や醸造、熟成についても別で書きたいと思ってます。
(でもまだ全文、訳しきってないの…)
コニャックの仕様書にも、もちろんしっかり蒸留について書かれています。
こんなの興味ある人いるかな。
直訳しているだけで特に説明等していません。
「仕様書訳」と内容が重複してしまいますが、次項目「蒸留器」からは解説しています。
必要ない方は目次から次の項目に飛んでくださいませ。
蒸留時期
現行の農村でのワインを蒸留することで得られたオー・ド・ヴィのみがAOC「Cognac(コニャック)」を名乗ることが出来る。
蒸留は収穫年の翌年の3月31日までに終わらせる必要がある。
蒸留原則
蒸留は再蒸留や二段階蒸留と呼ばれる単純単式蒸留の原理に従って行われる。この方法は、2段階ある「chauffes(ショーフ/加熱)」ステップの連続で構成される。
- プルミエ・「chauffes(ショーフ/加熱)」(1度目の過熱)はワインの蒸留を意味し、Brouillis(ブルイ)を得る。
- ドゥジエム・「chauffes(ショーフ/加熱)」(2度目の過熱)、「Repassse(ロパス/再蒸留)」または「bonne chauffe(ボンヌ・ショーフ)」はBrouillis(ブルイ)の蒸留を指し、蒸留の最初と最後を除くことでコニャックのオー・ド・ヴィを得る。(「flegmes(フレグム/アルコール原液)」とも呼ばれる」
- プルミエ・ショーフやドゥジエム・ショーフ時に、コニャックのオー・ド・ヴィとして保管されていない、ワインまたはBrouillis(ブルイ)を蒸留の開始および終了時に追加することが出来る。
蒸留設備の説明
「charentais(シャラント)」蒸留器は直火で加熱される窯、ポットカブト、スワンネック、ない場合もあるがワイン予熱器、冷却器付きの蛇管によって構成されている。
窯、ポットカブト、スワンネック、蛇管、アルコール計ホルダーは銅製でなければならない。
窯の合計用要は30ヘクトリットル(許容誤差5%)を超えてはならず、1回の過熱時に中に入れられる液体量は25ヘクトリットル(許容誤差5%)が最大である。
ただし、Brouillis(ブルイ)を得るための最初の過熱(プルミエ・ショーフ)に必ず使うという条件下において、窯の総容量が140ヘクトリットル(許容誤差5%)を超えず、1回の火入れ(ショーフ)に使用されるワインの量が120ヘクトリットル(許容誤差5%)に制限されている場合のみ、前段落で決定した最大容量を超える窯を使用することが出来ます。
オー・ド・ヴィのアルコール度数
2回蒸留の後、得られるアルコール度数はオー・ド・ヴィの通常容器で20度下において72.4%を超えてはいけない。
「エスプリ・ド・コニャック」の製造
これは2回蒸留の後、蒸留器を使って追加で行われる3度目の蒸留によって得られる。アルコール度数は80%から85%の間でなければならない。
クリュの変更における蒸留の方法
「クリュ」とはこの仕様書のC. 2.で定義された地理的領域のことである。
異なるクリュから得られたワインを蒸留する場合、蒸留の最初と最後に得られたbonne chauffe(ボンヌ・ショーフ)は以下の条件を除いて、Brouillis(ブルイ)に混ぜてはいけない。
- 変更前、蒸留中において最後のbonne chauffe(ボンヌ・ショーフ)は、蒸留所に3基以上の蒸留器を所有している場合、最大33%を使用して変更を行う必要がある。
- bonne chauffe(ボンヌ・ショーフ)蒸留の最初と最後の組み込みは、使用している蒸留器の容量の最大8%に制限される。
蒸留器
蒸留器はフランス語でAlambic(アランビック)と言います。
コニャックではAlambic Charentais(アランビック・シャランテ)と呼ばれるシャラント型単式蒸留器の使用のみが認められています。
実際はこういう蒸留器が使われています。
全て銅製でなければならないと決められていて、これを絵にするとこんな感じ。
これだけだと分かり辛いかと思うので、行程毎に説明します。
火はイメージです。
昔は薪をくべて24時間付きっ切りでの蒸留をしていましたが、今はほとんどのメゾンがガスで蒸留を行っています。
ワイン予熱器
Le réchauffe vin(ル・レショーフ・ヴァン)と呼ばれるのがワイン予熱器。
これは使うメゾンと使わないメゾンがあります。
その名の通り、ワインを予熱するためのもの。
蒸留前にここにワインを入れることで、ワインの温度が上がり蒸留するときのエネルギーを減らすことが出来ます。
そして、ワインの温度が上がっているために蒸留にかかる時間も減らすことが出来ます。
ちなみに、そもそも予熱器を持たないこんな蒸留器もあります。
これを使うことでオー・ド・ヴィの味が変わるという人もいるし、変わらない人もいます。
とにかく、最大のメリットは使用エネルギーの減少。
窯
次は蒸留窯です。
フランス語ではLa cucurbite(ラ・キュキュルビット)やLa chaudière(ラ・ショディエール)と呼ばれます。
ここにワインを入れて、熱することで蒸留が始まります。
もちろん、ここに入れてもいいワインは認められている範囲内のものに限られています。
アペラシオン・コニャックで認められている範囲は以前書いたので興味のある方は以下記事ご覧ください。
ポットカブト
ポットカブトはフランス語でLe chapiteau(ル・シャピトー)と呼びます。
気体になったワインが通る場所ですね。
ここが横に広いものを玉ねぎ型、すっと縦長なのをオリーブ型と呼んだりします。
この形が変わることで、最終的なコニャックの味も変わるとか変わらないとか。
スワンネック
Le col de cygne(ル・コル・ド・シン)と呼ばれるのはスワンネック。
フランス語でも白鳥の首という意味です。
ここも気体が通る部分です。
もちろん気体は熱いので、ワイン予熱器が付いていれば、この熱によってワインを温めることが出来ます。
冷却器付きの蛇管
Le réfrigérant avec le serpentin(ル・レフリジェラント・アヴェック・ル・サルポンタン)です。
フランス語読みはこんな感じ、という目安程度に見てもらえれば。
Le réfrigérant(ル・レフリジェラント)が冷却器、Le serpentin(ル・サルポンタン)がうねうねとした、とか冷却用蛇管の意味があります。
avec(アヴェック)は一緒にとか、ついた、とかそんな意味。
その名の通り冷却器が付いた蛇管です。
この蛇管は25ヘクトリットルの蒸留器で65メートルもあります。
水色に塗った部分に水が入っていて、それによって冷やされた気体が液体になって出てきます。
この時は透明な液体。
蒸留方法
ここまでで、蒸留器の名称等々わかっていただけたかと思います。
ここから、具体的な蒸留の方法です。
蒸留期間
ここ!重要です!テストに出ます!笑
コニャックでは収穫翌年の3月31日までに蒸留を終えなければいけないという決まりがあります。
今はガスを使ってパソコン制御しながら蒸留しているメゾンがほとんどで、数か月間寝ずに蒸留を行うことは少なくなってきましたが、春が来るまでは忙しいコニャック生産地域。
未だに薪をくべているメゾンもあって、そこでは蒸留器の横にベッドがあって数時間おきに火の様子や温度などを見ながら蒸留しています。
本当にほとんど寝ずに蒸留を行っているのです。
蒸留サイクル
図にするとこんな感じかな。
赤い矢印が二股になっているのは、ワインと一緒にするか、ブルイと一緒にするかでメゾンの特徴にもなるからです。
ちなみにHennessy(ヘネシー)とRémy Martin(レミー・マルタン)はブルイに入れて、Martell(マーテル)がワインに入れる傾向にあります。
大体の目安ですが、12kgのブドウから9ℓのワイン、3ℓのブルイ、1ℓのコニャックができます。
澱の有無
この澱(オリ)はワインの澱のことです。
澱を除いてから蒸留を始めるか、澱と一緒に蒸留をするか、ここでもメゾンの特徴が出てきます。
澱なしだと繊細でクリアなコニャックができ、澱ありだとオイリーでまったりしたコニャックができると言われています。
大手だと、Hennessy(ヘネシー)とRémy Martin(レミー・マルタン)が澱あり。
Martell(マーテル)が澱なしで蒸留を行います。
蒸留回数
ここも重要!テストに出ます!笑
コニャックにするためには必ず2回蒸留を行わなければなりません。
同じシャラント型単式蒸留器を使っていても、蒸留が1回だけではコニャックではなくただのブランデー(もしくはオー・ド・ヴィ)としか名乗れません。
逆に言うと、コニャックと販売されているものは必ず2回蒸留が行われています。
火を入れる作業のことをChauffes(ショーフ|加熱)と呼びます。
プルミエ・ショーフ
一度目の過熱のことをPremière chauffe(プルミエ・ショーフ)と言います。
文字そのまま、Première(プルミエ)が「最初の、一番目の」、Chauffe(ショーフ)が「過熱」です。
ブドウを醸造したワインの蒸留のことで、ここから得られるオー・ド・ヴィのことをBrouillis(ブルイ)と言います。
このBrouillis(ブルイ)はアルコール度数27~32度程度で、ちょっと濁っているのも特徴。
ドゥジエム・ショーフ
二度目の過熱のことをDeuxième chauffe(ドゥジエム・ショーフ)と言います。
これもそのままですね。
Deuxième(ドゥジエム)が「二番目の」、Chauffe(ショーフ)が「過熱」。
先ほどのBrouillis(ブルイ)の蒸留は、Repassse(ロパス|再蒸留)またはBonne chauffe(ボンヌ・ショーフ)とも呼ばれます。
同じ作業やのに呼び方がいっぱいあるのはフランスっぽくないですか?
蒸留の最初(Têtes|テット)と最後(Queues|クー)を除くことでコニャックのオー・ド・ヴィを得ることが出来ます。
さらに、このコニャックのオー・ド・ヴィはFlegmes(フレグム|アルコール原液)とも呼ばれます。
この時、蒸留窯が30ヘクトリットルの蒸留器には最大25ヘクトリットル入れ込むことが認められています。
テット・クー
ドゥジエム・ショーフで書いた「蒸留の最初と最後」。
なぁに?って感じですよね。
Têtes(テット|頭)とQueue(クー|お尻)と呼ばれます。
ちなみに真ん中のことをCœurs(クール|胸)と呼ぶので、わかりやすいですよね。
ドゥジエム・ショーフ後のTêtes(テット|頭)はアルコール度数78~82度、全体の1~2%くらいの容量です。
少しずつアルコール度数が下がってきて、Cœur(クール|胸)が出てきます。
Cœur(クール|胸)は60~78度程度のアルコール度数。
ただし、最終的にCœur(クール|胸)はアルコール度数72.4度を超えてはいけないと定められています。
ちなみにCœur(クール|胸)はFlegmes(フレグム|アルコール原液)とも呼ばれます。
さらにアルコール度数が下がってきて、Secondes(スゴン)とQueue(クー|お尻)が現れます。
Secondes(スゴン)はアルコール度数が60%弱です。
分析に加えて、試飲や香りによってCoeur(クール|胸)を決めるメゾンがほとんどです。
どこでカットするかでもメゾンの特徴が出てきます。
ちなみにこのカットのことはLa coupe(ラ・クープ)と呼ばれます。
熟成
熟成についてはまた別記事に書きます。
このCœur(クール|胸)、つまりFlegmes(フレグム|アルコール原液)を熟成することでコニャックが生まれます。
参考記事
コニャックの秘密。どうしてミレジメ/ヴィンテージものが少ないのか。
最後に
長々とお疲れさまでした。
今年は少しずつコニャックに関する記事を増やしていきます。
とはいえ、ワインの記事の方が多くなりそうやけど。笑
コニャックメゾンはブログに書いたりSNSに載せるのにも寛容で、写真とかもくれるから有難い。
コニャック用のブドウ品種等々もまとめますので少々お待ちくださいませ。
感想やこんな内容書いて欲しい!などあればお気軽に連絡ください。 sachiwines@gmail.com その他色々やってるので、良かったら見てください Instagram Twitter レストランブログ Facebook|Bordeaux-Japon.net ボルドージャポンネット Homepage|SachiWines 旧ブログ|レストランブログ
コメント
[…] 参考;コニャックの蒸留について […]
[…] コニャックの蒸留について […]