ボルドーのワイナリー訪問していると出会う「Vin casher」。
カタカナ読みだと「ヴァン・カシェール」かな。
英語だと「Kosher wine(コーシャ・ワイン)」。
ワイナリーでコーシャ・ワインを見つけると、絶対に触れてはいけないと言われるもの。
個人的に調べたかったもので、折角なので皆さんと共有したいと思います。
宗教が絡んでいるので、見たくない方は別記事をご覧いただければと思います。
Vin Casher?
Casherを辞書で調べると「Kascher」を調べろと出てきます。
CasherもKascherも日本語ではカシェールって発音が近いと思う。
ちなみにKascherは以下の意味。
①〔食べ物が〕律法に従って処理された,清い.
②〔店が〕(ユダヤ人向けに)律法に従って処理された食料品を売る.
出典:仏和大辞典
Vin casherはその名の通り、ユダヤ教の方々に向けたワインってことです。
では、具体的にどういうものなのかをご紹介します。
もう少し詳しく
ユダヤ人にとって、ワインは日常的な飲み物ではなく、宗教的な儀式のためのもの。
そのため古くから宗教的な礼拝と結びつけられていて、宗教的な範囲での消費に限定されていました。
しかし、聖書にはワインの消費を禁じる記述はなく、ユダヤ教律法は禁酒を勧めている訳ではないのです。
禁酒の規則がないこともあり、ここ十年程素晴らしいフランス産コーシャ・ワインを目にするようになりました。
これはワインに対する行動が変化したことによる、消費者の需要に対応するためです。
つまり、コーシャ・ワインは一定の製造におけるルールが適用された上で消費者に提供されている、特別なワインです。
ユダヤ人のワイン消費
ワインは歴史的に宗教的な儀式の際にのみ飲まれる神聖な飲み物とされてきました。
前にも書きましたが、神聖な場面以外での消費を禁止するものではありません。
ドライレーズンから造られる、甘口の白ワインが大部分を占めていましたが、20世紀末に消費方法に変化がありました。
1996年、Roberto Cohen(ロバート・コーエン)によってフランスでGolan(ゴラン/イスラエルの地域名)ワインが登場したからです。
彼はフランスで最初にイスラエルワインを輸入したネゴシアン。
輸入されたコーシャ・ワインによって、消費者にとって身近な存在となりました。
コーシャ・ワインの消費
コーシャ・ワインは安息日や祝日の聖務に使われます。
そのため礼拝の際に重要な製品であり、よって需要も高いです。
さらに、祈りだけではなく個人の楽しみのためにも消費されています。
つまりコーシャ・ワインの生産によって、新しい消費者層を獲得することが出来ます。
コーシャ・ワインとは
コーシャ・ワインの特徴は、敬虔なユダヤ教の人だけが扱うことを許されていることです。
さらに醸造のすべての作業はユダヤ教シナゴーグの祭司の宣誓司祭の監督下で行います。
彼らは大都市の長老会議で宣誓した教団の代表者です。
生産者はパリ司教区から委任された宣誓司祭の代表者と協力し、彼らの管理下で作業を行います。
つまり醸造の段階で私、それどころかワイナリーの方も触れることを許されていません。
ラベル表示
コーシャ・ワインと他のボトルを判別するために印がつけられています。
それぞれのコーシャ・ワインのボトルはヘブライ語の聖書に規定されている製品規定に従っていることを表す、4つの印が施されていなければなりません。
さらに製品にはBeth Din(ラビ審議会)のロゴとコーシャの製品であることを保証する「Cacher Le Pessah」の記載があります。
さらにコルクやラベル、ボトルにかける飾り、キャップシールには「KBDP」のロゴ が記載されていることがありますが、これは祭司の監視下で生産された限定品を保証しています。
パリの長老会が発行しており、コルクにはヘブライ語で「コーシャ」の記載が刻印されています。
コーシャ・ワインの製造
コーシャ・ワインの製造には、Beth Din(ラビ審議会)の許可を受け、以下2つの条件を満たす必要があります。
- ユダヤ人コミュニティのメンバーであること、もしくは醸造の間宗教の代表者が現場にいること
- ユダヤ人コミュニティが要求する基準に沿った醸造設備があること
樹になっているブドウはコーシャの範囲内にあるので、信仰に関係なく、農家であれば畑作業をし、ブドウ畑に入って収穫をすることが出来ます。
しかしブドウが選果台を通った瞬間に信仰者しか触れることが許されなくなります。
醸造設備
製造の際に使われる設備は「cashérisé(カシェリゼ)」と呼ばれます。
コーシャ・ワインを造るために、コーシャ化する、という意味でしょうか。
カシェリゼするために醸造で使うすべての設備を湯煎します。
例えばステンレスタンクは高圧洗浄機をかけます。
例えば、、コンクリートタンクや木製タンクは、不純物がタンクに残らないために24時間の内3回冷水で一杯にします。
設備のカシェリゼの管理をするのはショーリムで、貯蔵タンクの浄化にも介入します。
ショーリムがいることにより、ワインがきちんとコーシャ・ワインであることを保証することが出来ます。
彼らがいなければ、いかなる作業もできないため、彼らの役割の重要性が分かります。
作業タイミング
さらに宗教カレンダーを考慮する必要があります。
収穫期に重なることが多い祝日、さらに介入が禁じられている安息日などを考慮する必要があるということです。
その他の収穫や醸造の作業は伝統的なワイン製造とほとんど同じです。
製造中の制限はかなりの拘束力を持つので、最終的な生産コストが高くなり、原価も高くなります。
ワインの味
コーシャ・ワインは通常のワインと製造原則があまり変わらないため、ワインの味はほとんど変わりません。
しかし、ブレンドや熟成においては違いが現れます。
実際、ボルドーワインでは消費者がフルーティーさとまろやかさを求めているために、メルローが多くブレンドされる傾向があります。
さらにコーシャ・ワインは消費が早くできるようにするため、新樽熟成の期間を短くする傾向があります。
最後に
ワイナリー訪問をしていると、ガムテープで蛇口がぐるぐる巻きにされているタンクを見たり、樽の蓋が頑丈に閉じられているのを見たりします。
数年前に初めて見た時、絶対に触れるないで!と言われたのを覚えてる。
ボルドーでは大手ワイナリーが造っていることもあり、知名度が上がってきていると思う。
正直高いから、買おうと思ったことないんやけど、同じワイナリーの同じビンテージでコーシャ・ワインと通常ラインのワインの飲み比べとかしても面白そうやね。
今度買いに行ってきまーす!
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