2018年に書いたものを追記しながら、ボリュームアップしました。
前回はなかった仕様書の訳も追加したのでもしよろしければどうぞ。
目次
コニャック=熟成?
今回はコニャックに欠かせない「熟成」についてお届けします。
樽についても書きたいと思っているので、少しお待ちいただきたいです。
樽の作り方とか、文字だけでは説明しづらいから絵を描かねば。笑
まずは「コニャック」と名乗るためには熟成が必要です!
そして熟成はオーク樽でなければいけないと決まりがあります!
と、この辺りを詳しくお伝えしたいと思います。
仕様書訳
熟成に関する部分を抜粋しました。
特にここを読まなくても後に重複する内容を書いているので、飛ばしたい方は上の目次から次項目をご利用ください。
この項目はあえて太字にもしておりませんので、読みにくければすいません。
熟成
コニャックのオー・ド・ヴィの熟成は必ずオークでできた容器に入れなければいけない。
直接消費者に提供される場合、オー・ド・ヴィは最低2年間熟成させる必要がある。この最初の2年間の熟成はこの仕様書のC. 1.で定義された領域で行われる。
熟成の方法は、経済、予算、農業を担当する大臣令により定められる。
地理的領域内での最低熟成
この仕様書のC. 1.で定義された地理的領域外でAOC「コニャック」としてのオー・ド・ヴィの熟成を2009年9月21日までに行っていた場合、2023年7月31日まで継続することが出来る。
熟成の言及
2018年4月1日まで、コニャックのオー・ド・ヴィ、「XO」「Hors d’âge(オル・ダージュ)」「Extra(エクストラ)」「Ancestral(アンセストラル)」「Ancêtre(アンセトル)」「Or(オール)」「Gold(ゴールド)」「Impérial(アンペリアル)」はオー・ド・ヴィの熟成6年以上である、コント6から生産することができる。
蒸留器から出た新しいオー・ド・ヴィは原料となるワインの品質を反映しています。
地理的領域と品質、製品の特徴における因果関係;熟成
オー・ド・ヴィの熟成はオー・ド・ヴィが成熟するための過程、つまり最も長波の取れた感覚印象受容性の特性に対応するための進化の期間です。
製品の熟成には、オーク製の容器のみが認められています。
オー・ド・ヴィの熟成期間は熟成させるオー・ド・ヴィの特徴、求める製品の品質性質、熟成に使われるオークの容器の種類と年数によって決定されます。
これには、木材からの化合物の抽出の他、酸か減少や着色を含む熟成したオー・ド・ヴィの感覚的な特徴を得るために不可欠な、多くの物理化学的変化が含まれます。
「コニャック」の熟成は地域による気候条件と、歴史の中で培われてきたノウハウの両方の影響を受ける作業です。熟成の過程では、蒸留器を出た新しいオー・ド・ヴィを数年(場合によっては数十年)オークの容器に入れておく必要があります;様々な物理化学現象が起こります:水とアルコールの蒸発、様々な物質の凝縮、木材から化合物の抽出、酸化など。これらの現象はオー・ド・ヴィの初期特性(アルコール度数や酸度)、保管されている場所の特性や、セラーの物理特性(温度、湿度、換気)によってによって変化します。
コニャック生産地の温暖な海洋性気候では、熟成は以下のような特徴を持ちます。オー・ド・ヴィを適度な湿度と極端にならないように季節の変化にさらすことで、品質を高めます。セラーの位置や構造は、オー・ド・ヴィがまろやかに熟成するように、バランスの取れた条件を与えるために調整されます。
長期熟成の間に、オー・ド・ヴィと外部環境、木との交換を行うために、用途に応じて粒子の細かいオーク(Tronçais│トロンセ)または粒子の粗いオーク(Limousin│リムーザン)、Quercus petraea(フユナラまたはオウシュウナラ)、Quercus robur(ヨーロッパナラ)選ばれます。この地域で発展してきた多くの樽会社はコニャックのセラーマスターと協力しながら「コニャック」の熟成に最適なノウハウを蓄積してきました。新しいオー・ド・ヴィの初期の特徴、熟成段階、最も適切な容器の選択はセラーマスターの役目です。
「コニャック」がオークの木と空気に触れて成長する間、水分とアルコール分が少しずつ蒸発していきます。このアルコール蒸気は(詩的に「天使のわけまえ」と呼ばれる)は毎年数百万本に相当する量で、セラー近辺ではTorula compniacensis(トルラ・コンピアセンシス)という微細なカビが生まれ、この地域の石を覆って黒くしています。
「コニャック」の熟成はブレンドの技術と切り離せません。この技術はコニャックメゾンのセラーマスターの職業の重要な部分を担っています。色のパレットを持つ画家のように、セラーマスターは異なる産地のコニャックを選択します:異なるクリュ、異なる熟成年数、若い樽で熟成コニャックや、古い(すでにコニャックが熟成された)樽、異なるタイプのセラー(湿度の高い、低い)など。
実際、それぞれのオー・ド・ヴィは、その熟成過程に応じて、独自の官能特性を持ち、ブレンドされるほかのオー・ド・ヴィによって価値を持ちます。
複雑であるために、技術的な方法だけを身につけただけでは実現できないのが適切なブレンドです。セラーマスターは経験に基づいた知識(原料の多様性とアペラシオンの特徴の知識、原料と熟成による相互作用に関する経験、必要な技術の習得)が必要で、試飲による検査と、生産の各段階におけるオー・ド・ヴィの素晴らしい感覚的記憶を必要とします。
このノウハウは、同じ職の先輩へ長年の見習い期間を必要としますが、この地域の企業組織の密度と、セラーマスター、ブドウ栽培者、ネゴシアン、クルティエ間の専門家コミュニティでの交流のおかげで、差別化され、維持、継承されてきました。
ラベルに関する具体的なルール
出荷されるコニャックのオー・ド・ヴィの最低年数は、それぞれ以下のように対応する必要があります:
- コント2:「3 Etoiles(トロワ・エトワール)」「Sélection(セレクション)」「VS」「De Luxe(ド・リュックス)」「Very Special(ベリー・スペシャル)」「Millésime(ミレジム)」
- コント3:「supérieur(シューペリウール)」「Cuvée Supérieure(キュヴェ・シューペリウール)」「Qualité Supérieure(カリテ・シューペリウール)」
- コント4:「S.O.P.」「Réserve(レゼルヴ)」「Vieux(ヴュー)」「Rare(ラール)」「Royal(ロワイヤル)」「Very Superior Old Pale(ベリー・シュペリオール・オールド・ペール)」
- コント5:「Vieille Réserve(ヴィエイユ・レゼルヴ)」「Réserve Rare(レゼルヴ・ラール)」「Réserve Royale(レゼルヴ・ロワイヤル)」
- コント6:「Napoléon(ナポレオン)」「Très Vieille Réserve(トレ・ヴィエイユ・レゼルヴ)」「Très Vieux(トレ・ヴュー)」「Héritage(エリタージュ)」「Très Rare(トレ・ラール)」「Excellence(エクセレンス)」「Suprême(シュプレーム)」
- コント10:「XO」「Hors d’âge(オール・ダージュ)」「Extra(エスクトラ)」「Ancestral(アンセストラル)」「Ancêtre(アンセトル)」「Or(オール)」「Gold(ゴールド)」「Impérial(アンペリアル)」「Extra Old(エクストラ・オールド)」「XXO」「Extra Extra Old(エクストラ・エクストラ・オールド)」
- 「XXO」と「Extra Extra Old(エクストラ・エクストラ・オールド)」は14年かそれ以上の熟成オー・ド・ヴィに限定されています。
上記に列挙した複数の熟成表記と、特定の年数コントに付随するものを除いて、同一ラベルに、同一コントの複数の熟成に関する記載をしても、年数カウントは変わりません。
同一ラベルに、異なるコントの複数の熟成に関する記載をする場合、使用されている最も古いコントのものを除かなければなりません。
熟成に関する表示とその方法は、購入者や消費者に「コニャック」の熟成期間や実質的な品質に混乱を招いてはいけない。
熟成年数
以前つくったものをそのまま利用します。
これは、コニャックの「コント」と呼ばれる熟成年数の数え方。
コニャック生産のためには、収穫翌年の3月31日までに蒸留を終えていなければいけないという法律があります。
蒸留については以前詳しく書いたのでそちらの記事をご覧いただければと思います。
- 参考;コニャックの蒸留について
そのため、このコントは4月1日を目安に計算されます。
蒸留が終わった年をコント0、その前年、つまり収穫年がコント00です。
その後は1年毎にコント1、2、3…と増えていきます。
蒸留翌年にはコント1、つまり熟成年数1年。
最低熟成年数
上の表を見てもらったらわかる様に、コント2、つまり熟成年数2年からVSやその他の熟成年数を表す名前が付きます。
理由は簡単。
それ以前の熟成年数だと「コニャック」としての販売が認められていないからです。
例えばコニャック生産地域で、法律を守って蒸留酒を造ったとします。
でも熟成せずに販売すると「コニャック」と名乗る資格がなくなり、ただのブランデー(eau-de-vie、オー・ド・ヴィ、蒸留酒)になってしまいます。
そもそも売れなくなるし、販売価格も下がるし、良いことがないので、みんな熟成したものを販売しています。
ちなみにこれらはBNIC (Bureau National Interprofessionnel du Cognac、コニャック委員会)によって定められています!
ラベル表記
仕様書訳に書いたものと同じものです。
コント表示が?な方は上の「熟成年数」をご覧ください。
実はこんなにいっぱい名前があるのです。ちょっとびっくりしませんか?
- コント2:「3 Etoiles(トロワ・エトワール)」「Sélection(セレクション)」「VS」「De Luxe(ド・リュックス)」「Very Special(ベリー・スペシャル)」「Millésime(ミレジム)」
- コント3:「supérieur(シューペリウール)」「Cuvée Supérieure(キュヴェ・シューペリウール)」「Qualité Supérieure(カリテ・シューペリウール)」
- コント4:「S.O.P.」「Réserve(レゼルヴ)」「Vieux(ヴュー)」「Rare(ラール)」「Royal(ロワイヤル)」「Very Superior Old Pale(ベリー・シュペリオール・オールド・ペール)」
- コント5:「Vieille Réserve(ヴィエイユ・レゼルヴ)」「Réserve Rare(レゼルヴ・ラール)」「Réserve Royale(レゼルヴ・ロワイヤル)」
- コント6:「Napoléon(ナポレオン)」「Très Vieille Réserve(トレ・ヴィエイユ・レゼルヴ)」「Très Vieux(トレ・ヴュー)」「Héritage(エリタージュ)」「Très Rare(トレ・ラール)」「Excellence(エクセレンス)」「Suprême(シュプレーム)」
- コント10:「XO」「Hors d’âge(オール・ダージュ)」「Extra(エスクトラ)」「Ancestral(アンセストラル)」「Ancêtre(アンセトル)」「Or(オール)」「Gold(ゴールド)」「Impérial(アンペリアル)」「Extra Old(エクストラ・オールド)」「XXO」「Extra Extra Old(エクストラ・エクストラ・オールド)」
- 「XXO」と「Extra Extra Old(エクストラ・エクストラ・オールド)」は14年かそれ以上の熟成オー・ド・ヴィに限定されています。
最後に書いたXXOについては色々ありまして…笑
別記事に書いているので、次回更新をお待ちいただければと思います。
VS
VS は「Very Special」の頭文字をとっています。
一番若いコニャックがコレで、最低2年の熟成期間を経ています。
ちなみに« 3 étoiles »や« luxe »と書かれたコニャックを目にすることがありますが、それらはこのVSのカテゴリーに属します。
大きいメゾンはVSか次にあるVSOPを沢山製造していて、カクテル用の比較的安いコニャックです。
VSOP
「Very Superior Old Pale」の頭文字を取ったのがVSOP。
最低4年の熟成を必要とします。
こちらもカクテル用コニャックですが、小規模生産者はこの時点で熟成年数10年を超えていることもあります。
XO
「Extra Old」でXO。
一番有名な呼び名がこれではないでしょうか
今まで最低6年の熟成を経ていれば名乗れましたが、現在(2018年4月1日から)は最低10年に変わりました。
しかし、そもそもXOで販売しているもののほとんどが10年以上熟成したものだったので、法律が変わったことで大きな変化はなかったようです。
(ただ、大きなメゾンを含むいくつかは少しブレンドを変える必要があったとか)
今まで販売していたコニャックをそのまま販売できるメゾンにとっては、勝手に法律が変わっただけで何も変化はなかったようです。
こちらはストレートで飲む食後酒。
なぜ英語表記?
ちなみにVSやVSOPなどが英語なのは、歴史的にコニャックを購入していたネゴシアンや消費者が外国人だったからのようです。
今でもコニャックの98%弱が輸出されていて、ほとんどフランスで消費されていません。
そして、きっとこの2%の大部分がコニャック生産地域…笑
ランクを下げての販売は可能?
例えば熟成年数20年のものをVSOPとして販売するなど、法的には格上でも認められているものの格下げは問題ありません。
小さな生産者のほとんどはXOと書ける熟成年数でVSOPを販売しています。
それはXOの熟成年数がより長いので、そことの格差をつけるためだそう。
ミレジメコニャックは?
ミレジメコニャックと書きましたが、ブドウ収穫年をブレンドせず、単一年で販売しているコニャックのことです。
存在しますが、ワインと違って認証を得るのがとても大変。
ビンテージもののコニャックを造るためには、熟成中に樽を開けることが認められていません。
(ただし、検査官同行の場合は可能)
ビンテージもののコニャックを沢山販売しているメゾンに見学に行くと、牢屋の中に樽が眠っていて、鍵は検査官が持っているとのこと。
オーナーといえども気軽に触れないコニャックで、検査官を呼ぶのにお金もかかります。
かなりの手間がかかってしまうので、ビンテージコニャックはあまり目にしないのが現状。
自分の生まれ年コニャックを見つけたら思わず買ってしまいそうです!
参考記事
コニャックの秘密。どうしてミレジメ/ヴィンテージものが少ないのか。
最後に
お疲れさまでした。
大きく変更しましたがいかがでしょうか。
少しは分かりやすくなっていれば嬉しいです。
とはいえ、文字がかなり増えてしまったので、読みづらくないか心配…。
今後、コニャックについての情報強化をしていきますのでどうぞよろしくお願いします!
感想やこんな内容書いて欲しい!などあればお気軽に連絡ください。 sachiwines@gmail.com その他色々やってるので、良かったら見てください☆ InstagramやTwitter レストランブログ Facebook・Bordeaux-Japon.net ボルドージャポンネット Homepage・SachiWines 旧ブログ・Bordeaux-Japon.net ボルドージャポンネット レストランブログ
コメント
[…] コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]
[…] コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]
[…] 参考;コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]
[…] コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]
[…] 参考;コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]
[…] 参考;コニャック、熟成年数についてまとめ。VS/VSOP/XO […]